「春よ来い、早く来い」(年がわかる?)で唄われるように、春は本来だれにとっても楽しみな季節だったはずです。
『春が来るのがユウウツだ』という花粉症の方も、しっかり対策をしてできるだけ快適に過ごしていただくための対策です。
外来ですべてをお話しすることはできませんので、よくご覧になって参考にしてください。
要点は
です。
花粉症なのかどうか
花粉症は花粉が原因のアレルギー疾患です。自分は花粉症だといって来院する方のなかには副鼻腔炎などべつの疾患だった方もいます。専門医に正確に診断を受けて下さい。
アレルギーの正確な検査には鼻鏡検査、鼻汁中好酸球検査、鼻誘発反応検査、皮内反応検査、血中IgE(アイジーイー)検査などがあります。
抗原(アレルギー症状の原因になっている物質)は何か、どの程度影響を受けそうか
スギ花粉症が有名で患者数ももっとも多いですが、多くの方が複数の物質にアレルギー反応を起こします。
原因を正確に知って対策を立てることが大事です。
早期治療(予防的治療)の時期を考える上でも必要です。
皮内反応検査、血中IgE(アイジーイー)検査などで調べます。
最適な治療のためには花粉がどの程度飛んでいるか把握していることも大事です。
新聞、ラジオ、テレビ、インターネットなどで調べるとともに、天候から自分である程度予測することもできます。
必要最小限の薬で快適に過ごすためには、花粉飛散状況に合わせた服薬が必要です。
いくら薬をきちんと使用しても大量の花粉を吸い込むのは良くありません。
「環境省 花粉症保健指導マニュアル」に詳しく書いてあります。
杉の木は古来よりありますが、スギ花粉症は20年前にはあまり知られていませんでした。
患者数は増加中で日本人の10%を越えると言われています。
以前は小児、老人には少ないと言われていましたが、これらの年齢層でも増えています。
これらの現象から、スギ花粉だけが悪者ではないことが想像できますね。
避けた方が良いのは、
室内排気型の石油ストーブ、ガスストーブ
タバコ
排気ガス(特にディーゼンエンジン排気中の微粒子)--> 春は自転車通勤、通学を避けた方が良い?
→ 「環境省 花粉症保健指導マニュアル」の『大気汚染物質と花粉症』をご覧下さい。
食物との関係は不明ですが、保存料、着色料などが多いものは良くないのではないでしょうか。
治療の主体は薬です。必要最小限の薬で、アレルギー症状を最大限軽くするのが良い治療だと思います。
最適な治療のためには、患者さんも薬の特性を知って上手に使用することが必要です。
まず、ご自分の重症度を知りましょう。
次に、処方された薬の種類を、薬局から出された資料や薬の名前から調べましょう。
「環境省 花粉症保健指導マニュアル」などでも薬のことがわかります
重症度と処方された薬を知った上で、下の図を見てください。
中等症、重症の人が"A"で使う、第二世代抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬にはあまり即効性はありません。
症状があってもなくても毎日続けて使用することで数週間で安定した効果を発揮するようになります。
薬を上手に使う
・症状がひどくなってからでは薬がききにくい---早めの対処を
・花粉飛散のステージにあわせて薬の調節をする
・薬の特性を知って上手に使う
・どの薬を選択するか--重症度、眠気の程度が主な基準
重症度に合わせた治療
軽症の人は
抗ヒスタミン薬を早期から使用
大量飛散時には頓用で追加
中等症の人は
抗ヒスタミン薬を早期から使用
局所ステロイド薬も早めに使用
大量飛散時には頓用で追加
重症の人は
抗ヒスタミン薬、局所ステロイド薬を早期から連用
大量飛散時には場合により短期作用型のステロイド剤を全身投与、ただし副作用に十分注意
鼻閉が強いタイプ
ケミカルメディエータ遊離抑制薬 or トロンボキサンA2受容体拮抗剤
局所ステロイド薬
血管収縮剤、ただし連用をできるだけ避ける
シーズン後半に鼻閉が増悪するケースが多い
一旦鼻閉が悪化すると治療に難渋する
シーズン前半から手を打たないとむずかしい
薬剤の選択
抗ヒスタミン薬の副作用としての『ねむけ』発現の程度には個人差が大きい
薬の種類によってもねむけの程度が異なる。アレグラ、エバステル、アレジオンは比較的眠くなりにくい。
薬の効果の強弱も、当然薬によって異なる。
花粉症の重症度も個人差が大きい。よって患者さんそれぞれに、薬との相性がそれぞれ生じてくる。
花粉飛散度合いも年によって、また時期によって大きく異なる。
治療の目標は必要最小限の薬を使い、必要最小限の出費で済ませ、必要最小限の副作用で、花粉の時期を最大限快適に過ごすこと。
いろいろな要素が関わってくるので、患者さん自身が、処方された薬の特性を知った上で上手に使用する必要が出てくる。
免疫療法(特異的減感作療法)
抗原液(アレルギーを起こす物質を抽出、精製してつくった治療用エキス)を繰り返し注射する治療で、アレルギーの治療としては唯一、長期間の寛解が期待できる治療法といえる。
手術(鼻粘膜焼灼術、下甲介切除術、鼻中隔矯正術)
鼻粘膜焼灼術は、下鼻甲介の粘膜表面を電気凝固、薬剤、レーザーなどで変性させてアレルギー反応を抑える目的で行われます。
効果の持続は通常数ヶ月間です。治療の後1,2週間は鼻の乾燥感、鼻汁の増加、鼻閉の増強などが一旦生じます。その後症状が軽くなることが期待できます。花粉症の場合には花粉の飛散開始1から2ヶ月前に行うのが望ましい。